平和首長会議の総会に参加して
長崎大学で開かれた「平和首長会議」の第9回総会(8月7日~10日)には、NET-GTASの学生サポーター3人が主催者から招待され出席しました。
世界162か国にまたがる7,417市町村が加盟する国際、いや、都市際会議の晴れがましい席に招かれた3人は、堂々の英語力を発揮し、「核兵器のない世界」を創るための提案をしていました。
会議を終えて戻ったばかりの熱い胸の内を、早々に書いてもらいました。
●高橋尚也君(19)=スペイン語学科1回生
武蔵野市を担当し、武蔵野市長の邑上守正様に初めてお会いした時はとても緊張しました 。しかし、市長様は僕たちを温かく出迎えくれてとても嬉しかったです。その後も、武蔵野市が今後実践できそうな平和活動の提案をいくつか出し、時には市長様に褒められることもありました。グループで武蔵野市が今まで行ってきた平和活動を調べて参考にし、たくさんの意見を集めることができました。しかし、5分という限られた時間で発表しなければならなかったので、全て発表することはできませんでした。それでも、困った時は若者同士で助け合い、互いの絆が深まりました。終わった後は僕たちのグループの発表によって、武蔵野市から世界中に平和活動が広まり、世界にも平和の大切さを知ってもらいたいと思いました。最後に市長様から名刺を頂き、大切な宝物になりました。今回、平和首長会議という貴重な行事に参加させて頂き、とても良い経験になりました。若者にしかできないことや将来の期待を背負っていくことを考えるきっかけにもなりました。平和首長会議に参加した経験をもとに、これからの世代の人たちにも平和の大切さを伝え、受け継いでいきたいと思います。
●川瀬由希子さん(22)=国際教養学科3回生
八月九日に、長崎で行われた第九回平和首長会議の一つ、会議Ⅲに参加しました。この会議は、ただその日に行って議論をする訳ではありません。ランダムに振り分けられた担当都市に対して、その都市でできる平和への提案をし、担当都市の市長さんと一緒になって案を考えるというユニークな形でした。一緒に提案を考えるグループのメンバーもランダムで決められるため、長崎、東京、広島など住んでいる場所がばらばらで、作業は自己紹介から始まりました。
この会議の目的はグループで短期、中長期で実現できる提案をつくることで、グループワークがとても重要でした。グループのメンバーとは宿泊していた宿が同じだったため、寝る間も惜しんでの議論を行いました。もちろん眠気に襲われるのですが、寝てしまうのが勿体無いと思えてしまうぐらい充実した時間でした。メンバーの共通の興味や強みを集めて、さらにそれを発展させるという作業を行ったため、自分たちが自信を持って提案できる短期案「Peace from Here」と中長期案「Peace Movie World Contest in Vitry-Sur-Seine」が出来上がりました。
今回の会議では、提案した案の内容やそのプロセスはもちろんですが、それ以上にこれから活動していく上での「支え」を得たと感じています。安定していない状態だから必要な「支え」という意味ではありません。核兵器廃絶や平和に向けて活動をしていると、自分たちの活動に意味があるのだろうかなど無力感に陥ることがあります。そんなとき、今回の会議で出会った同世代の仲間という「支え」があることによって、自分だけ孤独に戦っているのではない、距離は遠くても共通する目標に向かってみんなも頑張っているんだと思えます。会議は50分とあっという間でしたが、会議までの数週間、合宿のような長崎入りをしてからの濃い数日があったからこそ貴重な時間になりました。今回が初めての試みであったこの会議に参加できたことを嬉しく、そして素晴らしい機会を与えていただけたことに感謝しています。
●阿比留高広君(22)=国際教養学科4回生
私たちの班は、ネットでもなかなか情報が出ない、カメルーンのフォンゴトンゴ市を担当。副市長さんとメールでやり取りしながらみんなで知恵を出し合い、最終的に発表した案は5つ。1、フォンゴトンゴと長崎で共同のHPを作る
2、両市の学生で短期交換留学を行う
3、フォンゴトンゴには日本語、長崎にはフォンゴトンゴ独自の言語のコースを作る
4、そのコースで学ぶ学生を中心にチームをつくり、原爆当事者、紛争当事者の証言の翻訳を行う
5、フォンゴトンゴの歴史と平和活動について(翻訳して)記した金属板のモニュメントを道に設置する。
カメルーンの公用語は英語とフランス語。しかし、フォンゴトンゴの住民は家の中ではモックとヤンバと呼ばれる言語を話していることが分かった。ぜひその言語で翻訳することに。
翻訳の中身について、初めは被爆者証言のみの翻訳を考えていたが、それに加えて、フォンゴトンゴでは周辺の都市住民との民族争いによる犠牲者がたくさんいるとのことで、彼らの証言もぜひ日本語に翻訳使用ということになった。市民と市民が手を携えて平和を実現しようとするとき、一方の主張をどちらかが受け入れるだけではなく、お互いが平等に、誠実に向き合うことが大切であるということを改めて感じた。
さらに気づかされたのは、議論する時にまずお互いの前提条件や文化の違いを認識することの大事さ。例えば、日本では活動の発信手段として安易にウェブサイトやSNSという発想が浮ぶ。しかし、フォンゴトンゴではその担い手となるスマホを持っている若者は少数派。ちなみに、メールでは日本の生真面目な性格とカメルーンのおおらかな性格とのギャップを感じたが、お互いに会って話せばすぐに打ち解け、会う前に持っていた一種の疑念のような感覚が晴れた。異文化交流の際、疑念ではなく信頼をもとにもめごとを解決するという市民同士のつながりの重要性が大いに感じられた。
(まとめ=長谷邦彦)
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