翻訳作業を通して考えたこと

翻訳作業を通して考えたこと
Limさんが翻訳を担当した「田村サワ子さん」の韓国語字幕入りビデオ映像(NET-GTAS撮影)

翻訳作業を通して考えたこと

What I thought through translation work: A-bomb survivors have showed courage and told their cruel experiences to us. Let’s listen to their voices, and think about nuclear weapons, wars and peace.

私が被爆者の証言ビデオの字幕を日本語から韓国語に翻訳するのは、今回の「田村サワ子さん」で3回目となりました。

Limさんが翻訳を担当した「田村サワ子さん」の韓国語字幕入りビデオ映像(NET-GTAS撮影)
Limさんが翻訳を担当した「田村サワ子さん」の韓国語字幕入りビデオ映像(NET-GTAS撮影)

京都外国語大学に在学中であった2012年、初めて証言ビデオを見ました。それまで私は「原子爆弾」とか「被爆者」という言葉について深く考えたことはありませんでした。翻訳することになった時、私にとっては日本語を韓国語にすることが優先であり、「核兵器」や「原子爆弾」、「戦争」という恐ろしいことについて考える余裕はありませんでした。しかし、何度も証言録を読み、また動画を見ながら被爆者の証言を聞いたときは、 心が苦しくなりました。事実に基づいたあまりにも残酷な話だったからです。
その時まで被爆者についてあまり知識がなかった私ですが、被爆者の方の話を聞いた時は想像もできないほどの被爆者の辛さを考え、大きな衝撃を受けました。そして、その痛みと辛さに対して何もしてあげることができない自分に対して無力感も感じました。

2回目の翻訳は、同じ2012年、京都外大が国連軍縮局に協力してビデオ字幕を7つの言語に翻訳することになった時。そして3回目が、今度のNET-GTASの取り組みで「田村サワ子さん」の韓国語翻訳というわけです。もう初めての仕事ではないので、着手前は、少し気持ちを楽にして翻訳することができると思いました。核についても被爆された方についても、以前よりは少し知識があり、翻訳のプロではありませんが、プロのように訳すことだけに徹すればよいと考えていました。

ところが、それは大間違いでした。同じ「被爆体験」であっても、同じ方が話してくれることであっても、何回聞いても慣れることのできない話でした。前と同じく証言録と映像を見ながら訳しましたが、とても辛い時間でした。もちろん私は被爆の経験はないわけですが、その話は想像するだけでも恐ろしく、怖い話でした。

正直、自分を含め、戦争を経験してない今の世代にとって、話を聞いたり見たりするだけでは、本当の戦争や被爆の恐怖や辛さというものを簡単に理解できるとは思いません。しかし、被爆者の方々は、私たちの世代と同じように、美しく、楽しく過ごしたかったであろう若い頃に戦争を体験し、被爆を経験しました。思い出したくもない、その恐ろしく、残酷で悲惨な出来事について、勇気を出して語ってくださっているのです。だから私は、被爆者の方が勇気を持って語ってくれていることを受け止めていかなければならないと思うようになりました。

いま私はNET-GTASで「田村サワ子さん」に続き、次の被爆者のビデオ字幕の翻訳を済ませたところです。たくさんの仲間が、韓国語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語への翻訳に取り組んでいます。多言語化によって、世界中の、より多くの人々が「核兵器」「原子爆弾」「戦争」の悲惨さについて知り、伝え、そして平和への道について考えることができたらと思います。あまり知られていない、韓国にもいる被爆者についても。(韓国語サポーター、ソウル在住)

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